2022年5月25日水曜日

外科医という仕事

外科医という仕事はいろいろな業務で成り立っています。一般的に言われるのは「手術」を仕事の中心に据えた業務ですが、私自身は内視鏡もやるし、当然外来診療も病棟業務も、少し前までは(うちは人手不足の中規模病院なので)お手伝いで、手の足りない内科外来のお手伝いもしていました。

手術という侵襲を伴う治療を行う以上、患者の術前術後管理は厳密にやらないと大きく結果に影響するし、患者さんやご家族からの信頼を得るためには多くの準備と配慮を要します。さらに多くのスタッフをまとめ、情報を共有し方針を立てていくためのエネルギーも不可欠。それ故に大変でもあるのですが、それがあることで同時にやりがいも得られ、いままで続けてこられたのも確かだと思います。

もはや「王様」然とした外科医が診療を一人で回していくことは現代の医療では不可能であり、外科医はオーケストラでいえば指揮者であり、時にはソロアーティストであり、舞台監督もやりつつ公演のプロデューサーもこなすマルチプレーヤーでなければいけないのかもしれません。

当然人間性も問われることは必定、ですよね。

2022年5月18日水曜日

病院に最初に会話する事務スタッフとのやりとりで大切なことを教えます

 

もしみなさんが病院やクリニックを初めて訪問した場合、その医療機関で最初に会う人は医師でも看護師でもなく、受付などの事務スタッフになると思います。保険証の確認から問診表の記載方法説明など、誰でも経験があるのではないでしょうか。

事務スタッフも医療従事者ですので、相応のトレーニングを受け、患者さんの状態を把握し、医師・看護師に情報を伝達する大事な役目を担っています。

でも最初に会う事務スタッフにどのように対応してもらうかで、大きくその医療機関の印象は変わってきますよね。

受診する側の気持ちとしては、最初に会った人に全部お話しすれば医師まで情報が通じてあとは適切に処理してくれると思いがちですが、なかなかそうはなりません。ですから、はじめから全部伝えたいことをぶつけるのではなく、要点を絞って、「どういう症状が、いつから、どのように出現しているか、何が今心配なのか」を整理して伝えることをおすすめします。

事務スタッフはいろいろお話を伺いますが、治療方針や医師がどのような判断を下す可能性があるかを事前に説明することはできませんし、してはいけないと指導されています。

つまり最初に医療機関で対応してくれる事務スタッフには、要点を簡潔に伝え、最終的に医師が診断や治療方針の判断を下す際に必要な細かい情報は診察時に分かるようにお話しする方が良いと思います。

そうじゃないと「さっき受付の人に言ったのに、また同じ話をしなくちゃいけないの?」ということになってしまいますので。

2022年5月14日土曜日

医師としての能力の見せ方


 自分の持っているスキルや能力(概ね医師としての)をどのようにアピールするか、をよく考えます。アメリカでは医療ドラマなどを見ていても「私出来ますっ!」って積極的アピールをすることが多いと思いますが、やはり日本人には馴染まない印象ですね。

「能ある鷹は爪を隠す」ではありませんが、人より秀でていることをことさら強調するよりは、さらっと、そしてそつなく仕事をこなす外科医がかっこいいと思ってしまいます。

    「あの先生は実は仕事が早い」

    「患者さんとのトラブルは聞いたことがない」などなど、

 いい意味で周りから言われてみたいものです。

 新しい職場では、あまりおとなしくしていてもすぐには評価が上がりませんが、ちょっと相談しに来る方がお願いしにくそうな頼まれごとを「あ、いいっすよ」と軽やかに請け負い、テキパキこなす、というのが自分の能力を最大限に見せつけられる機会だと思っています。

2022年5月11日水曜日

限られた医療資源の中で

病院の規模・マンパワーの中では、すべての医療機関が大規模総合病院のような検査・診療ができるわけではありません。病院のサイズや設置された場所・設立母体によって必要とされる医療や質は変わってきます。

 

大切なことはその病院が地域で求められていることを正確に把握し、効率的にリソースを活用し、患者さんにとって最適な医療を提供することです。

年に数回しかない手術・検査のために多くの医療機材やマンパワーを確保するより、医療環境や患者さんの状態によっては速やかに高次医療機関へ紹介する方が良い場合が多いことも事実。ただ交通アクセスが限られる地域などでは、効率性よりもその地域で医療が完結することや、継続性を求められることもあります。

 

必要なことは、

今そこでは何が求められ、

現状では何ができるのか、

 

を正確に把握し医療提供体制を構築することだと思っています。

2022年5月7日土曜日

患者さんの病院への受診動機

どうしてこの患者さんはここの外来を受診されたのか。

再診予定患者、かかりつけからの紹介、健診異常を指摘されての受診などはっきりした理由があることが我々の消化器外科外来では多いのですが、なかには直接来院された患者さんが、最初の主訴(腹部症状・肛門症状他)とは違った理由で病院に来られたことを知ることもあります。うまくそれを問診などで引き出せればいいのだけれど、うまくいかないと結局会話がかみ合わずに診察が終了してしまいます。

総合診療科の先生や、街のかかりつけ医である開業の先生方はきっとそういう問診が上手なのだと思いますが、外科医は頭が比較的短絡的(もちろんそうじゃない優秀な外科医もいると思いますが)にできているので、こういった問診での患者さんの隠れた要望をすくい取るのが苦手です。

ましてや当直中の夜間に直接来院される患者さんの中には「日中の外来が混んでるから」とか「朝から仕事だから」といった理由で受診する方が紛れてくることもあり、診察する側の気持ちの余裕がなくなっているため、いろいろ問題(クレームなど)が起きやすい状況になります。

2022年5月3日火曜日

医師との会話で大切なことを教えます

 

医者と話をするのは緊張する、何を聞いたらいいか分からない、という声をよく聞きます。間違ったことは聞いちゃいけない、素人が勝手な判断はしてはいけない、というプレッシャーもあるかもしれなません。

医者も人間なので、疲れている時も機嫌が良くないこともあります。でも基本的に目の前の患者の訴えはきちんと聞こうと思っているので、会話の冒頭から患者さんやご家族のお話を否定することはないと思います。今一番つらいことは何か、いつから症状があるのか、を順序立てて話をすればそれまで経過が整理され、診断につながりやすく、治療方針がたてやすくなります。

注意して頂きたいことは、「とりあえず薬だけ出してもらえれば」とか「明日仕事(学校)に行けないと困るので」など、自分の中の結論が先にありそれに沿った治療や検査・投薬などを要求すること。私自身も「なぜこの人(患者)は病院に来たのか」という理由付けを大事にする方なので、「これだけのことをやってもらえればいい」というスタンスで来られるとさすがにカチンときます。

逆に、「こんなことを聞いたらいけないかもしれないんですけど・・・」と前置きをされてから質問をされることは、たとえ本筋と若干はずれる内容であってもあまり腹は立ちません。そういう質問の多くは、患者さんご自身が自分なりの解釈で現在の症状と理解可能な病名・病態を漠然と結びつけてしまっていることからくることが原因だからです。

医療者ではない一般の方は、一般的に様々な症状を一つの病名に結びつけがちです(分かりやすい方に思考が向いてしまうのは仕方ありません)。

身体に起こっている様々な現象をすべて一瞬で説明できるほど人間の身体は単純じゃありませんし、それを解決できるほど医者の頭は優秀ではないと思っています。


医師のキャリア形成

  医師は医学部を卒業して国家試験に合格し、臨床研修医になった瞬間から医師としてのキャリア形成が始まります。ここでいうキャリアとは臨床として経験を積んでいくことを指し、研究・学位取得などのアカデミックキャリアのことではありません。 まず医師になって 5 年間は通常研修医・専攻...